会社はこれからどうなるのか
バブル崩壊後のこの日本の10年を、「失われた10年」とみるのか、それとも、「新しい未知の制度(ゲームのルール)を模索している産みの苦しみの10年」とみるのかは、議論の分かれるところです。
最近、主題タイトルの本(岩井克人著/平凡社)を読みました。
多分、既にもうお読みになった方も多いのでは、と思います。
小林秀雄賞受賞ということで、何か文学的な風味でもあるのかな, と思いましたが、中味は実に平明に書かれた「日本の会社について」の本でした。
平明ではありますが、よく考えてみると、著者の意味するところは、なかなか示唆に富み、「会計」という切り口から「会社」というものを見、その価値をどう捉えるか、等に関心を持つ我々(eg。USCPA)にとっても、色々「考えるヒント」を与えてくれているように思いました。
例えば、PBR(株価純資産倍率)が1を切る企業が、東証1部の4割前後(1年前のピーク時では何と6割)、もあるにも拘わらず、日本でグリーンメイラーが出てこない(例外、村上ファンド)のは何故だろう? ie。米国流のLBOの発想に立てば、M&A 後、叩き売ればおつりがくる?
こうした疑問を念頭に読むと、岩井氏は学者(東大教授)らしい、なかなか説得力のある展開で、応えてくれているように思います。
例えば;
会社は株主の為でしかないというのは、法理論上の誤りだとし、又、今後の資本主義社会の中で、資本(Capital)の持つ重要性、支配力は弱ってきていると指摘。
そして今、歴史の流れは、「産業資本主義」から「ポスト産業資本主義」への移行期にある。
我が日本型は、その「後期」産業資本主義(重化学工業時代/大量生産、大量消費)に余りにも高度に適応した形(eg。終身雇用、年功序列、企業内組合)であり、そしてまさにそれが為に、今のこの変化の過程で、グローバル化、IT革命、金融革命等、に上手く対応できなくて苦しんでいるのが、現在の状況だ。
今や、「会社の市場価値」の7割は、有形資産ではなく、無形資産(Intangibleassets/ブランド、パテント、データベース、経営者の企画力、技術力、従業員のノウハウ等、ie。知識資産)である。
ポスト産業資本主義とは、差異性を意識的に創り出すことによって、利潤を生み出していく形態である。
差異性とは、新技術、新製品、新組織形態、新市場等、他の企業が出来ないことを行うことにより、独占利潤を確保、つまりオープンアーキテクト化されない独自のコアコンピタンスこそが、利潤を生み出す源泉である。
それは特許、製造秘密や、ブランド、顧客リスト、といった既にモノの形をした知的資産というよりは、まさにそれらを生み出していくことの出来る、組織に固有の人的資産、の総体である
つまり、静態的ではなく、動態的なコンセプトだ。
これらが、私の独断と偏見に基づき、端折って要約した、岩井氏が見る「変化の過程にある会社」の姿、かと思います。
以上の認識を踏まえ、では「会社はこれからどうなるのか」ですが、この点については;
- 古典的なオーナー企業(マーケットで評価される独創性、を持ったリーダーに率いられる企業)
- シリコンバレー・モデル(プロの経営者活用型)
- 組織特殊的な人的ネットワーク(含む、暗黙知)等、コア・コンピタンス を有する企業
- NPO法人
- 大企業等で経験を積んだ後、スピンアウトし、自らリスクをとって 起業する、ニッチ企業
等、を今後の時代をリードしていく企業形態、として挙げています。
回答は必ずしも、瞠目すべきものとは言えないかもしれません。
然しながら;
「それでは貴方はどうなると思うのか?」と問われたならば?
また、「会計」の観点から、投資家の為に、会社の価値をより正しく、客観的、現実的に呈示する為には、物差しのどこをどう変えたら良いのか?
或いは、経営者にとって、戦略的会計の発想とは?
更に、個人と会社との関係は、今後一体どうなっていくのだろうか?
バブル後、この10年余り続くStruggleの中で、目指しているものは何だろう?
そして次に来る、あるべき社会のかたちとは?
等々、自分自身の今後の生き方との関係において、問題意識は、きっと皆さんも色々お持ちだと思います。
私は、昨年11月、JUSCPAに加入させて頂きましたが、既にこうしたディスカッションは、この会の色々な場で行われてきていることでしょう。
是非、ご意見をお伺いできたらと思います。
又、自由で気楽な、談論風発、啓発、切磋琢磨の場があれば、と思います。
どうか何卒、よろしくお願い申しあげます。